~~
中国の呉江浩駐日大使は4月28日、東京都内の日本記者クラブで、3月の着任以来初の記者会見に臨んだ。日中関係は「重大な岐路に立っている」と述べた上で、1972年の「国交正常化以来、最も複雑な状況に直面」しているとして、米国の中国対抗策に「追随」しないよう日本側を牽制(けんせい)した。
呉氏は日中関係の現状について「米国が他国を引っ張り込んで中国を封じ込めようとしている」ことが「最大の外部要因」だと主張した。日本政府が中国を「最大の挑戦」と位置付けたことに触れ、「中国の脅威を喧伝(けんでん)することで軍事拡充をしている」と防衛費増額に懸念を示した。
台湾問題では「武力行使の放棄を約束することはしない」と述べ、「(放棄しないことが)『台湾独立』に対する抑止力になり、両岸(中台)の平和と安定を維持する保障だ」と正当化した。
台湾側が、サラミを薄く切るように少しずつ状況を変えていく「サラミ戦術」で挑発しているとして、現状変更を試みているのは中国ではないと主張。「台湾有事は日本有事」との見方は「荒唐無稽で極めて有害だ」とし、「日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と日本側に干渉しないよう警告した。
先進7カ国(G7)外相会合は18日の共同声明で「台湾海峡の平和と安定」の重要性に言及した。呉氏は「G7が国際社会を代表するという言い方に賛成しない」とした上で、声明は「不公平で不公正」だとして、日本をはじめ各国に抗議したと明らかにした。
5月のG7首脳会議で日本が文書の採択を目指す「核なき世界」には「賛成だ」としつつ、その第一歩として核兵器の先制不使用を「日本は同盟国として米国に提案できるのか」と揶揄(やゆ)した。
日本企業の中国法人幹部の拘束では「反省すべきはスパイ行為をさせている人や機関ではないか」と反論。東京電力福島第1原発の処理水海洋放出は周辺国との協議が不十分だなどとして「断固、反対だ」と述べた。
筆者:田中靖人(産経新聞)